過去記事
自宅分娩体験期①妊娠編はこちら
自宅分娩体験期③産後編はこちら
分娩のエピソード
夜中に5分おきの陣痛らしきものが始まりました。
以前、同じような前駆陣痛が来ていたのですが、今回は不思議と赤ちゃんがやる気になっているような気がしたので、一度Mさん(助産師さん)に連絡しました。
まだ痛みは生理痛程度で余裕があったので、朝診察に来て頂くことになったのですが、そうこうしているうちに間隔が空き、細切れですが眠れるようになりました。
朝の診察では子宮口1.5cm。まだまだ時間がかかりそうということで、一旦Mさんは帰宅されました。
午前10時半ごろ、また陣痛が5分おきになってきました。12時に来て頂くことになっていたので、それまで夫に腰をさすってもらったり、アロマを使ったりしながら耐えました。
12時に診察してもらったところ子宮口2.5cm(10cmで全開大です)。
「まだ当分かかりそうだな…」と思っていた矢先、みるみる陣痛が強くなってきました。大声で叫ばずにはいられない、腰をハンマーで殴られたような…とにかく経験したこともないものすごい痛みです。
助産師としての知識を総動員し、一応深呼吸で逃そうと試みましたが、無理でした(笑)
事前に、「助産師としての知識は忘れるように(頭は使わないように)」という主旨のことを言われていたので、すぐに諦め、本能に身を任せることにしました(笑)
2~3分おきに来る陣痛のときは、椅子にしがみついて四つんばいの姿勢を取り、夫が一生懸命腰をさすってくれました。力が入るときは、主人の手を思いっきり握ったり、しがみついたりして痛みを逃しました。
同じように枕や寄りかかっている椅子を握ってみたりもしたのですが、不思議と、人を握っているときの方がうまく痛みを逃せました。もちろん痛いことには変わりないのですが、痛みの質がまったく違うように感じられました。人の力ってすごいなぁと思います。

そして、もう一つ不思議なのは、これだけ痛くて全身全霊で叫び続けているにも関わらず、「嫌だ」「もう止めたい」とは一度も思わなかったことです(これも個人差があります)。
あえて「今何時だろう」「今何cmだろう」「いつになったら産まれるだろう」などと余計なことは考えないようにして、ただ、陣痛が来れば夫を握って逃し、治まってくれば力を抜いてウトウト…を繰り返していました。
本当に何も考えずお産に集中していたので、Mさんに「もう7cmくらいかな」と言われたときは「え、もうそんなに来てるの?」と内心ビックリしました。
気がつくと15時になっていました。
そこで、Mさんに「お風呂に入る?」と提案されました。
正直、あまり動く余裕はありませんでしたが、これも人生経験だと思い入ることにしました(笑)
陣痛と陣痛の間に大急ぎで服を脱ぎ、痛みが来たのであわてて湯船に飛び込んだら、不思議と痛みはすっと軽くなり、しばらくウトウト休むことができました。
軽くなったとはいえ、すでに子宮口は8cmくらい開き、お産もクライマックスにさしかかっています。お風呂の中でも全力で叫び続けていたのですが、不思議なことに頭の中は冷静な自分がいました。
お風呂の窓が開いていたので、近隣に迷惑をかけてはいけないと思い、夫に窓を閉めるよう指示したり、なんとなくエネルギー不足になっているのを感じて、甘い飲み物を持ってくるよう指示したり…本能に任せている自分と、冷静に頭の中で考えている自分が同居しているような感覚でした。
お風呂で温まったせいか、お尻に力が入るようになりました。お風呂から出ることになりましたが、陣痛の合間をぬって身体を拭き、服を着なければなりません。
痛くてそれどころではなく、ビチャビチャのまま服を着て部屋に倒れこみました。
のぼせているので起き上がる気になれず、しばらく横たわって休むことにしました(陣痛がひっきりなしに来るので休めませんが)。
そうこうしていると、あっという間にいきみが入るようになりました。
内診してもらうと、子宮口は9cmまで開いていました。
力を入れずとも、反射のようにお尻に力が入ります。硬い便をして思いっきりいきむときの肛門の感覚が自動的に起こる、という感じでしょうか(笑)
「あのいきみはこういう感じなのか」と思いながら、四つんばいの姿勢を取り、あとはひたすら全身全霊でいきみました。
あまりいきむと赤ちゃんが酸素不足になるのでは…という心配が頭をよぎりましたが、もういきまずにはおれず、本能がこうしたいのだから赤ちゃんも大丈夫だろうと思い直し、椅子の柄が折れるのではないかと思うくらい全力で握り締め、いきみました。
何回か陣痛の波が来たあと、「清潔なシーツを敷くよ」という声が聞こえました。
初めてのお産は子宮口が開いてから時間がかかることが多く、覚悟していたので「もうそんなにお産が進んでいるの?」とビックリしました。
さらに何回かいきむと、「もういきまなくていいよ」と言われ、「もう産まれるの?」とさらにビックリしました(笑)
それくらいスムーズに赤ちゃんが下りてきたようです。
いよいよわが子に会える!!!
ワクワクしたなんとも言えない気持ちが一気に高まっていきました。
赤ちゃんが出てくるときは、MさんとTさん(サポートの助産師さん)のフォローのもと、夫が赤ちゃんを取り上げ、四つんばいになっている私の腕の方に渡してもらいます。
羊水でぬるぬると温かいわが子を直接抱きあげ、胸の上に抱き寄せました。
ずっと会いたかった娘。やっと会えたね、頑張ったね、かわいいね、ありがとう…という言葉が自然と出てきて、何度も名前を呼びました。
娘は少し泣いただけで、胸の上で穏やかに目を閉じていました。赤ちゃんはお母さんと一緒だと、安心してこんなにも穏やかなんだなぁ…と改めて思いました。
産後2時間まで、赤ちゃんの計測や私の身体拭き、母子手帳の記入などをしていきます。晴れてお父さんになった夫は、娘の産着を着せたり、写真を撮ったり、母子手帳を書いたりと産後も大忙しです。
私はその側で布団に横になり、不慣れながらも幸せそうに一つ一つ丁寧にやっている夫と、夫にそっくりな娘を見ながら、とても満ち足りた気持ちでその時間をすごしました。産んだ後は本当に穏やかな時間が流れ、家で娘を迎えることができて本当によかった、と心から思いました。
産後2時間経ち、問題なければMさんとTさんは帰宅されます。いつもの家に、昨日までお腹の中にいた娘が、私の布団ですやすや眠っています。
家族が買ってきたお寿司を夫と2人で食べていると、なんだか夫が戦友のように感じられました(笑)