10年住み着いた心の鬼

コラム

結婚は周りよりも早めだったから、子供がいなくてもだから10年のらりくらり過ごすことができていたのかもしれません。

だけど、勤め先は総務課。社内のおめでたニュースが全部聞こえる部署。

10年という年月でどんどん心がゆがんでいきました。

心の鬼が、10年の間に巨大化していくのがわかりました。

10年の間には1度も、ほかの人に対して、おめでとうなんて心から思ったことなんてありませんでした。

そのニュースに目をそらして、家に帰って泣くの繰り返しでした。

不妊も、顕微授精も、流産も、24時間以上の陣痛の後の緊急帝王切開も経験した今なら、そんな心の持ち主に、赤ちゃんは宿ってくれるはずがないと思えるんですけどね。

授かること、産むことは、簡単なことではない。本当に命懸けだから、心も体も健康で、赤ちゃんにやさしくなければいけないものだから。

 

ある日、その当時はその人の意見を素直に聞き入れることのなかった、嫌いだった上司に

「なに悶々としてるの?行動したら?」

その一言。たった一言。

その一言で本気になって、何よりも最優先で授かり治療に挑戦する決意が固まりました。

始めると明るい未来しか見えなくなって、心がどんどん澄んでいく感じがして、心の鬼はいつの間にか消えていました。

 

心が暗闇にいるときは、そこが暗闇だなんて気づかないものです。

体調が悪い時だって、健康になったらどれだけしんどかったか初めてわかるものだから。

でも、その暗闇の中では、一筋の光は本当に巨大で、強烈なもの。

何か一つの小さなきっかけが、大きな転機になった経験でした。